IR優良企業賞

毎年1回、優れたIR活動を実施している企業を会員企業の中から選定し、発表します。
審査委員会はアナリスト、投資家、報道機関などで構成されており、応募企業が申告する「調査票」の結果を踏まえて、「IR優良企業」を決定します。IRに熱心な「中・小型株企業」には、「IR優良企業奨励賞」が設けられています。
さらに2005年からは、長期間にわたって優れたIRを継続している企業や、顕著なIRを実施していた企業を称える「特別賞」を設けるとともに、優良企業賞の受賞が3回目となる企業は「大賞」として表彰することとしました。
「IR優良企業」は株価や時価総額を高水準に保つ傾向が見られます。そのため「IR優良企業賞」は、企業にとどまることなく、個人投資家など市場関係者からも注目を集めています。

IR優良企業賞2019 受賞企業

一般社団法人 日本IR協議会(会長:泉谷直木 アサヒグループホールディングス株式会社 代表取締役会長)は、このほど「IR優良企業賞2019」受賞企業を決定いたしました。

審査対象は、日本IR協議会の会員企業のうち株式を公開している企業で、2019年の応募企業は315社となりました。受賞企業はIR優良企業大賞1社、IR優良企業賞7社、IR優良企業特別賞4社、IR優良企業奨励賞2社の14社です。

IR優良企業大賞 受賞企業(社名50音順)

三菱UFJフィナンシャル・グループ
2018年・2017年IR優良企業賞

継続して経営トップがIRに関与し、決算説明会や投資家訪問など積極的な対話姿勢を示している。金融機関の中でも先進的な活動に取り組み、投資家が経営戦略や事業内容を理解する機会が豊富である。IR部門は「Investors Day」やテーマを定めた事業戦略セミナーなどを定期的に開催し、内容も工夫している。新しい事業戦略の背景にある考え方の説明や、社外取締役が課題を含めた率直な指摘をするESG説明会などが注目を集めた。

IR優良企業賞 受賞企業(社名50音順)

アサヒグループホールディングス
2014年大賞、2010年・2004年優良企業賞、2013年特別賞

経営の透明性を高め、IRで得た知見を活かす姿勢が明確である。経営トップは対話の機会を積極的に設け、経営課題や成長戦略についても深い議論ができる。2019年に豪州企業買収を発表した直後は株価が下がったが、その後の説明が明確であるという評価を得た。 IR部門は業界動向を含めた丁寧な説明資料を作成し、「IR Day」を企画するなど投資家のニーズに応えている。コーポレートガバナンスについても取締役会の実効性評価など株主が関心を持つ領域の説明を充実させている。

花王
2002年・2000年優良企業賞

経営トップが主導してIRのレベルを向上させている。社長自ら説明を尽くす姿勢への評価が高い。経営層が出席する説明会やミーティングの質疑応答もウェブサイトで公開されている。2019年にESG戦略を発表し、ESGを経営の核に据えて企業価値向上を目指す方針を明確化した。 対話を通じた取り組みによって、資本市場への浸透が進んでいる。法務部門担当役員による対話など、ガバナンス体制の理解を深める取り組みにも積極的である。

ソニー
2018年・1996年優良企業賞、2017年特別賞

経営トップとCFOが株主・投資家との対話を重視し、中長期の企業価値向上に活かす姿勢を貫いている。2019年は株主からの提案に「CEOレター」を発表する取り組みも先進的であると評価された。 事業部門が説明責任を果たす姿勢も明解で、セグメント情報開示や資本市場の関心を取り入れた 「IR Day」を充実させている。ESG説明会に加えて統合報告書も発行し、ESGへの取り組みを進めている。フェア・ディスクロージャー継続への評価も高い。

ダイキン工業
2017年優良企業賞

中長期志向の投資家との関係強化を目指し、丁寧な情報開示と積極的な対話に取り組んでいる。ESGとの親和性が高い事業の情報発信が効果的で、ESG説明会や事業説明会への評価が高い。株主・投資家との対話は頻度の向上に加え、投資家ごとの関心事に応えることを重視して設定している。 資本市場に理解してもらおうという意欲が高く、決算説明会の資料や事業戦略、製品の市場動向などの説明資料は、使いやすいという定評がある。

丸井グループ
2017年優良企業賞、2016年特別賞

サステナビリティ(持続可能性)を意識し、先進的なIR活動を続けている。経営トップとCFOの積極姿勢は高く評価され、2015年から発行する統合報告書や「共創サステナビリティ説明会」も注目を集めている。 2019年に表明した2050年に向けた長期ビジョンやTCFDへの賛同、EPS重視などKPIを交えた説明もわかりやすい。有価証券報告書における経営状況のわかりやすい記述や政策保有株式の詳細な開示なども評価できる。

三井住友フィナンシャルグループ
2013年優良企業賞

経営トップによる定期的な株主・投資家との対話や、経営層による投資家訪問が高く評価されている。こうした機会が投資家の理解を深め、信頼感につながっている。株主還元を含む資本政策の説明もわかりやすい。 事業部門長や子会社社長との意見交換会や、各事業部門トップが説明する「IR Day」も事業戦略の方向やROEへの意識を確認できる。IR部門も資本市場が懸念する事項に対して、定量的な開示に努めている。

三井物産
2018年・2008年優良企業賞、2014年特別賞

「インベスターデイ」を総合商社で先進的に開催し、経営トップも関与するなど高水準の活動を継続している。経営層との定期的な対話機会やCFOによる訪問などは、投資家から高い評価を得ている。 IR部門が経営陣に近く、フィードバックも適切に行われているため、対話が充実し、IR活動も向上している。「インベスターデイ」を敷衍した内容の統合報告書や、事業計画の前提などもわかりやすい。バランスの取れた活動ができている。

IR優良企業特別賞 受賞企業(社名50音順)

積水化学工業
初受賞

経営トップや事業責任者が投資家と戦略や課題について積極的に議論している。IR部門責任者も自社の強みや製品市場の状況などを的確に把握しているため、説明が合理的でわかりやすい。セグメントごとに業績変動要因情報を掲載するなど決算説明会資料も充実している。 説明会の状況は質疑応答まで含めて迅速にウェブサイトで公表しており、フェア・ディスクロージャーへの意識も高い。ESG対応も、説明会などで効果的に発信している。

日本電信電話
2015年優良企業賞、2014年特別賞

経営トップが中期経営戦略の進捗や株主還元の方向性を、資本効率に関わるKPIを活用して説明している。定期的な投資家との対話は、課題を共有してコミュニケーションを深める機会として評価が高い。 「IR DAY」では投資家の関心が高い分野を担当役員が説明するとともに、ESGへの取り組みも紹介し内容を充実させている。ガバナンスの課題への対応を率直に示し、ダイバーシティの進展に向けて説明したパートは、投資家の注目を集めた。

日立建機
初受賞

IR活動の改善、向上が注目されている。現在の経営トップの積極的な姿勢には定評があり、投資家との対話機会が充実している。IR部門は投資家の問い合わせに丁寧に対応し、事業説明会の開催など活動の幅も広げている。 社内のIRへの理解促進を進めるため、投資家からの厳しい意見も経営にフィードバックし、要望を資料の改善などに活かしている。中核事業とSDGsに対する取り組みとを関連付ける資料づくりにも取り組んでいる。

横河電機
初受賞

経営トップが投資家との対話を重視し、情報開示を推進している。中長期視点の投資家に資するため、理念に基づく事業戦略を説明したり、同業他社状況の説明を伴って業界での位置づけについて理解を促したりといった取り組みに評価が高い。 課題を踏まえた中長期視点でのESG対応の進展も注目されている。事業拠点のある地域の住民との交流に意欲的で、各地の証券会社支店で説明会を開催。その地域密着型の個人向けIRには定評がある。

IR優良企業奨励賞 受賞企業(社名50音順)

テクノプロ・ホールディングス
初受賞

経営トップが意欲的にIR活動に取り組み、経営方針も明確に示している。CFOが交代した際の説明も充実していた。事業戦略が投資家の立場に立って説明されており、資本コストを認識してWACCやROICを活用しているのも評価できる。 決算説明資料やカンファレンスの議事録など情報開示が詳細でわかりやすい。買収した会社ののれん減損処理に関する説明も注目を集めた。コーポレートガバナンス強化に向けての施策も説明している。

メタウォーター
初受賞

災害が増えて施設の老朽化対策が急務とされる中、自社が関わる「水インフラ」の認知度を高めるため、積極的にIR活動を続けている。一般にわかりにくいとされる事業の仕組みについて、経営トップやIR部門は、国や自治体などの取り組みと合わせて事業モデルをわかりやすぐ説明し、業界全体の理解度向上に努めている。 事業説明会の開催に加え、「メタウォーターレポート」を作成し、ESGの視点を反映している点も評価されている。